漫画 戦国小町苦労譚の魅力・・ネタバレあり

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戦国小町苦労譚 【コミック版】 1 -農耕戯画- (アース・スターコミックス)

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農耕歴女が戦国時代にタイムスリップしてしまった。歴史と農業の知識で織田信長の覇業を手助けすることになったのだが・・・信長の無茶振りのせいで前途多難。期待に答えて出世してゆくことはできるのか。「小説家になろう」発100万部超えのコミック化「戦国小町苦労譚」。

戦国小町苦労譚のあらすじ(ネタバレあり)

第一話

部屋に鳴り響く目覚ましの音。
本棚には歴史関係の書籍がぎっしり詰まっている。
布団から手を伸ばし目覚ましのアラーム音を消し、制服に着替える。

うつらうつらしながらもが学校への道をゆく。
この農業高校の女子生徒が本作の主人公「綾小路静子」だ。
農業と歴史に夢中な彼女のことをクラスメイトは「農耕歴女」と呼ぶ。

放課後カラオケに誘われたが、家の農作業の手伝いのため断り、一人で下校する。
途中、姉に頼まれた本を買い、書店を出たところで意識が途切れてしまう。

気がつくとの草むらにいた。
自然が豊かな周囲の景色には全く見覚えがない。
「どこに来てしまったのか」「どうしてこうなったのか」
自問をしていると何やら人の気配が近づいてくる。

4人の男たちだ。
その出で立ちは奇妙なものだった。
ほぼ半裸で、腰には刀を差している。
下品な笑みを浮かべ、襲いかかろうとしているようだ。

「ヤバい」
反射的に猛ダッシュし逃げようと試みるも、
すぐに追いつかれて、地面に組み伏せられてしまった。
頭の中が真っ白になる。

次の瞬間、襲いかかってきた男は背後から槍で突かれる。
血を流し倒れる男。
見ると、戦国風の具足を身に着けた兵士が数名、槍を構えていた。

間一髪、兵士に助けられた静子だが、状況は理解できていない。
そんな中、兵士たちの背後から馬に乗った武将らしき男が近づいてくる。
その家紋、刀、衣装を見て、気付いたのだ。

この武将は織田信長だ。

第二話

織田信長から、不作続きの地の村長になり収穫を上げるよう、命を受けた静子。
現代から持ち込んだ種と農業知識で何とか命令を果たせると考えていた。

実際に村人たちを見るとひどく痩せている。
彼らのためにも作物を多く実らせないと。
張り切って村人に自己紹介するのだが・・・

女衆は受け入れてくれたのだが、男衆からは拒否されてしまった。
この時代、女性は下に見られていて人権などという概念もない。
そもそも静子が村長として豊作に導けるだけの能力があるとも思えないのだ。

結局ほとんどの男たちは自分たちのやり方で農作業を続けていくことになった。
静子は自分に従ってくれる女たちと僅かな男たちで独自の農法を始めようと決意する。

まずは村の状況を把握しなければならない。
10世帯で人口は30人
牛は2頭
土壌は痩せているので堆肥が必要
そんなことをチェックしながら村や耕作地を廻っていく。

現代から持ち込んだ種は
かぼちゃ、スイートコーン、トマト、小松菜、玉ねぎ、サトウキビ、さつまいも
これらをどう育てていくのか。

気候的にはどれも問題ないようだ。
よくよく考え、最初に実行するのは・・・

戦国小町の魅力

タイムスリップもの定番の時代間ギャプ

現代人が戦国時代へ行き、現代の道具や知識を使って活躍する物語。
先日亡くなった千葉真一さん主演の映画「戦国自衛隊」などがそのはしりなのかな。
歴史上の人物と出会い、彼らの生き様に驚きつつ、彼らからも信頼を得てゆく。

物語の冒頭で織田信長に出会い、うっかりその本名を口にしたため、殺されかける。
領主から村長に任命されたにもかかわらず受け入れてもらえない。
それは女性というだけの理由。

現代では考えられないような理不尽に多々遭遇する。
特に主君となる織田信長からの命令の数々は正にパワハラそのもの。
なんといっても失敗したら命の保証がない。
そんな時代で現代の女子高生が苦労しながらも出世してゆくのだ。

戦国時代&農業の豆知識

戦国時代そのものについて、またその時代の村人たちの生活について詳細に描かれている。
特に現代種の作物を痩せた土地でどのように栽培していくか等説得力があり、よく調べているなと感心する。
堆肥の作り方やさつまいもの植え方、害獣対策等が描かれている。

もちろん、堆肥の作り方などは詳細には書いておらず、要点をまとめているだけだが、絵があることで伝わってくる。
このように読者を「へ~!」と納得させることでリアリティが増してくる。

その他にも知的好奇心をくすぐるような豆知識が満載だ。
例えば、戦国から江戸時代にかけての風呂の習慣の変化などは面白かった。

主人公が万能すぎる件

主人公の綾小路静子は歴史好きの農業高校生。
ベースは現代の女子高生なのだが、とにかく万能なのだ。

祖父の農業を手伝っていて、畑の耕作から栽培、収穫までできる。
また、土壌の状態も分析できて、堆肥を作り改良までする。
石投げ器やクロスボウを設計して、鹿を狩猟し、解体までできる。
野生の狼を手なづけたり、温泉浴場を作ってしまう。

その能力で、新しもの好きな信長に気に入られ出世してゆく。
その成功の物語が痛快なのだ。

戦国小町の感想

この時代にこの技術があればどうなっていたんだろう。
そんな疑問を呼び起こし、答えてくれる漫画だ。

そういった意味では、かわぐちかいじ先生の『ジパング』を思い起こさせる。
ただし、こちらは少々の種子と主人公の農業等の知識がメインなので派手さはない。
その代わり、誰にも知られずに現代の技術で戦国時代を変えてゆく。

世界の歴史ではなく、身近な村人たちの生活を救っている。
それでも、村人を始め領主である信長をも感動させてしまうのだ。

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