漫画 アシガールの見どころ ネタバレあり

漫画

アシガール1巻をebookjapanで試し読み

元気が取り柄の女子高生が戦国時代へタイムスリップ。そこで運命の人と笑撃的な出会いをして、恋をしてしまう。憧れの若君様に近づくため、何と足軽になって同じ戦場で働こうとするのだが・・・一途な恋には敵の矢玉も怖くない?果たして想いは届くのか。

あらすじ(ネタバレあり)

登場人物

速川唯(唯之助)  平成の女子高生、陸上部で一番の俊足
速川尊       唯の弟、タイムマシンを発明
羽木忠清      黒羽城主の嫡男、戦国武将

第一話

時は戦国期の日本。
鳴り響く銃声。
胸を打たれて出血し倒れ込む兵士。

別の兵士は陣笠の端に銃弾が当たり穴が開く。
もう少しずれていたら、頭部に命中していた。
強運と恐怖を感じながらも、同僚には強がるその兵士こそ。

主人公の「唯之助」だ。

戦況が芳しくない中、領主の嫡男、いわゆる「若君」が単騎で敵陣に切り込んでゆく。
それを見た唯之助は、若君の供をするべく申し出る。
若君から名を尋ねられ、大声で三度も自分の名を叫ぶ唯之助。

戦場では己の武功をアピールすることも大事だが、功名心に逸りすぎている感が否めない。
しかし、唯之助の必死のアピールには出世のためではない、別の思惑があった。

唯之助は平成生まれの女子高生だ。
天才肌の弟が作ったタイムマシンで現代から戦国自体にタイムスリップしてきたのだ。

第二話

タイムスリップした先は戦に破れて敗走中の兵たちが野営している只中だった。
幸いにも真夜中だったので、服装を見咎められることはなかった。
それどころか同じ隊士と勘違いされているようであった。

その機に乗じて、朝までに足軽装束を手に入れ敗残兵たちに混じることにした。
戦死した孫兵衛の息子で新入りの唯之助と騙り、一緒に行動するようになる。

この一行は小垣城の兵士であったが、敵方に攻め込まれ、城を捨てて敗走中だった。
目指すのは彼らの本城である黒羽城である。

黒羽城下では孫兵衛の妻、つまり名を騙った唯之助の母が待っているとの情報を聞く。
そのような人に会えば、自分が嘘をついたことがバレてしまう。
そう考えた唯之助は口実を設け、隊を離れ林の中をさまよう。

あてもなく林の中を歩いていたが、疲労と空腹でバテてしまう。
力なく倒れ込むと、目の前には野生のきのこが。
思わず食べようとしたその時、

「毒じゃ」と声をかける者がいた。
声の主は凛々しい若武者であった。

この瞬間に、唯之助は恋に落ちたのだ。

アシガールの魅力

価値観のギャップ

現代の女子高生が戦国時代で足軽になるという、突拍子もないストーリー。
だが、いかにも漫画的で面白い。

主人公は脚が速いのとポジティブな性格が特徴だが、戦闘力はゼロに近い。
戦場に出るのも、大好きな若君の側にいたいから。
単純なのだが、ひたむきさと明るさで戦国の世の人たちから好かれてゆく。

平和ボケと言われて久しい現代日本人が過酷な時代で戦場に立つのだが、いろいろと活躍してしまう。
また、現代と戦国の価値観のギャップも面白く表現している。

家や命に対する価値観の違い。
特に結婚や側室といった制度に対して、主人公は自分の時代の価値観を頑なに守っていく。
足軽の生活には慣れていくのにである。

適応し受け入れてゆくものと譲れないもの。
そんなものは誰にでもあるのだろう。

戦国時代の生活感が出ている

戦国時代物なので合戦の場面もあるのだが、この時代の庶民の生活も描かれている。
白米がごちそうであることや、貧しいながらも村人同士が少ない食料を分け合っていること等、普段の生活シーンが有る。

このように生活感を醸し出すことで作品に現実感がもたらされている。
とはいえ、タイムマシンや数々の便利な道具が非現実的ではある。
ただ、それらがメインではないのであまり違和感がない。

つまりラブコメ

要は戦国とSFの要素があるラブコメだ。
一途に恋する少女がその想いを遂げるために、周囲を巻き込みつつ繰り広げるドタバタ劇だ。
その過程で、何故か活躍し出世してゆく。

それまで男子にあまり興味がなかった主人公の女子高生が戦国時代にタイムトリップして、若い武将に一目惚れしてしまう。
その武将は領主の嫡男で、超イケメン。
戦場では勇敢に戦うが実は戦自体は好きではない、という現代人に近い価値観を持っていた。

ある意味、理想の男子像を戦国武将として表しているのだ。
そして何故か、美人でもない主人公に好意を持つようになる。

モテモテのイケメンが非モテの主人公を好きになる。
このあたりは少女漫画の鉄板の展開なのだ。
つまり、王道ラブコメ。
それに、戦国という要素が加わってくる。

・足軽と領主の嫡男という身分の差(?)
・戦場の過酷さ
・側室候補との葛藤
・家や領民たちへの責務
・兄弟との家督争い

等々
メインはラブコメなのだがこれらの要素よって、とても斬新な作品になっている。

感想

「ごくせん」で知られる森本梢子先生の作品。
タイムスリップというありえない設定の中でいかに現実味を出してゆくかは作者の力量にかかっている。
そこはベテランの森本先生、時代考証を見事にしていることでぼくのような大河ドラマ視聴者層からも受けが良い。

というのは、本作がドラマ化されてNHKオンデマンドで配信された際、長い間ランキングの上位に留まっていたことでも推察される。
また、タイムスリップものとしては珍しく、現代と過去に何回も行き来している。

一定の制約はあるものの現代人の主人公が戦国時代に行き、戦国の若君が現代に来ている。
それによってお互いの価値観が近づいてゆき、愛情がより強固になる。
この辺りの流れも自然で面白い。

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